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2009/06/23

劔岳 点の記

「バーチャル」で「簡単」な現代に、この映画が創られたことに敬意を表します。

公式サイトはこちら → 「劔岳 点の記

封切りを楽しみにしていたこの映画。
CGや空撮を一切使わず、順撮りにこだわり、キャスト・スタッフともに山に機材を背負って登って、「本物」の「劔岳 点の記」の映画を創った・・・と聞けば、おのずと期待が高まります。

ストーリーは、新田次郎の同名小説を元にしています。

日露戦争翌年、日本地図には唯一最後に残った空白地帯「劔岳」一帯がありました。初登頂をめざす、発足したばかりの日本山岳会を率いる小島烏水らに対抗し、陸軍の威信をかけて、陸地測量部の測量技師柴崎義太郎に「初登頂せよ」という上層部の至上命令が下ります。
柴崎は地元のガイド宇治長治郎らを雇い、登山ルートを検討し、劔岳への登頂を試みます。一方の山岳会も現地に入り、登頂の機会を伺います。最初はお互い敵視していた2グループですが、雪崩や暴風雨、遭難の危険など厳しい環境の中で、お互いを認め合いたたえ合うようになっていきます・・・

「事実は小説より奇なり」という言葉がありますが、実際には、事実は往々にして淡々と過ぎていくもの。
この映画も、ストーリーとしては淡々と過ぎていく感があります(原作は小説ですが、史実を元に書かれている)。

それをスケールの大きな作品に仕上げているのは、劔岳の大自然。演出の99%は劔岳自体が行っていると言っても過言ではないでしょう。
そそり立つ絶壁、延々と続く壮大な雪渓、紅葉、雪、流れ行く雲、激しい吹雪・・・どれをとっても圧倒的な迫力!

何時間もかけて山に登り、何時間もかけて天候の調子を待ち、1,2カットしか撮れなかったという話も聞きました。映画の中で、三角点を設置し測量を行っても、天候が悪くなって結局測量自体ができないというシーンがあります。この映画の撮影自体も同じようなものでしょう。忍耐で最高の条件を待つ。それが映画の重みを増しています。
しかも山は常に危険と隣り合わせ。雪崩や滑落、転落のシーンもありますが、これも本当に撮影されたものなんですね。スタントも使ってないのでしょうか(エンディングロールには通常の映画と違い、キャスト・スタッフの別なく関わった人の名前だけが延々と流れます。『キネマ旬報』にスタッフの詳細が出ているのですが、スタントという項目はありませんでした!)へたすると命に関わるかもしれないこんなシーン、どうやって撮ったのだろうとびっくりします。

ラストには原作にはない話が盛り込まれていますが、劔岳の大自然のすばらしい演出に人間が加えた1%の演出だとすれば、これではないかと思います。詳細は書きませんので、ぜひ劇場でお確かめ下さい。

今、私たちが簡単に見ている地図。これを作るのに先人のこんなに壮絶なご苦労があったなんて。
道なき道を重い機材や標石などを担いで登り、地道に測量して、正確な地図を作る。
そのおかげで今、私たちはより安全に山にも登れるし、軽装でトレイルランなんてこともできる。
本当に感謝しなければなりません。
これから、山に入って三角点を見たら、そこを測量した人たちに思いを馳せたいと思います。

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