劔岳 点の記
「バーチャル」で「簡単」な現代に、この映画が創られたことに敬意を表します。
公式サイトはこちら → 「劔岳 点の記」
封切りを楽しみにしていたこの映画。
CGや空撮を一切使わず、順撮りにこだわり、キャスト・スタッフともに山に機材を背負って登って、「本物」の「劔岳 点の記」の映画を創った・・・と聞けば、おのずと期待が高まります。
ストーリーは、新田次郎の同名小説を元にしています。
日露戦争翌年、日本地図には唯一最後に残った空白地帯「劔岳」一帯がありました。初登頂をめざす、発足したばかりの日本山岳会を率いる小島烏水らに対抗し、陸軍の威信をかけて、陸地測量部の測量技師柴崎義太郎に「初登頂せよ」という上層部の至上命令が下ります。
柴崎は地元のガイド宇治長治郎らを雇い、登山ルートを検討し、劔岳への登頂を試みます。一方の山岳会も現地に入り、登頂の機会を伺います。最初はお互い敵視していた2グループですが、雪崩や暴風雨、遭難の危険など厳しい環境の中で、お互いを認め合いたたえ合うようになっていきます・・・
「事実は小説より奇なり」という言葉がありますが、実際には、事実は往々にして淡々と過ぎていくもの。
この映画も、ストーリーとしては淡々と過ぎていく感があります(原作は小説ですが、史実を元に書かれている)。
それをスケールの大きな作品に仕上げているのは、劔岳の大自然。演出の99%は劔岳自体が行っていると言っても過言ではないでしょう。
そそり立つ絶壁、延々と続く壮大な雪渓、紅葉、雪、流れ行く雲、激しい吹雪・・・どれをとっても圧倒的な迫力!
何時間もかけて山に登り、何時間もかけて天候の調子を待ち、1,2カットしか撮れなかったという話も聞きました。映画の中で、三角点を設置し測量を行っても、天候が悪くなって結局測量自体ができないというシーンがあります。この映画の撮影自体も同じようなものでしょう。忍耐で最高の条件を待つ。それが映画の重みを増しています。
しかも山は常に危険と隣り合わせ。雪崩や滑落、転落のシーンもありますが、これも本当に撮影されたものなんですね。スタントも使ってないのでしょうか(エンディングロールには通常の映画と違い、キャスト・スタッフの別なく関わった人の名前だけが延々と流れます。『キネマ旬報』にスタッフの詳細が出ているのですが、スタントという項目はありませんでした!)へたすると命に関わるかもしれないこんなシーン、どうやって撮ったのだろうとびっくりします。
ラストには原作にはない話が盛り込まれていますが、劔岳の大自然のすばらしい演出に人間が加えた1%の演出だとすれば、これではないかと思います。詳細は書きませんので、ぜひ劇場でお確かめ下さい。
今、私たちが簡単に見ている地図。これを作るのに先人のこんなに壮絶なご苦労があったなんて。
道なき道を重い機材や標石などを担いで登り、地道に測量して、正確な地図を作る。
そのおかげで今、私たちはより安全に山にも登れるし、軽装でトレイルランなんてこともできる。
本当に感謝しなければなりません。
これから、山に入って三角点を見たら、そこを測量した人たちに思いを馳せたいと思います。
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コメント
スタントは使ったそうですが、松田龍平さんが雪崩で埋まるシーンでは、本当に埋めて、しかも現実感を出そうと、かなり深く埋めたそうなので、気絶寸前だったというエピソードもききました。きっと、エンディングロールの中には、スタントの人の名前も入っていたのでしょうね。
今、僕がトレーニングのために気軽に入っている山も、道がなければ到底登れません。
本当に、切り開いた人たち、それを維持している人たちに思いを馳せずして、山には入れませんね。
投稿: hoyohoyo | 2009/06/23 21:29
なんか違うんじゃないかな、という気がしてなりません。
地図を作ることと、未踏峰を制覇することとは、全く別なこと。地図を作る、という大義名分を掲げて、単に意地を張っただけなのでは?
剣岳の周りにはそんなに苦労せずに登れるピークはいくらでもあって、地図を作るだけならそれらの複数のピークに基準点を設置すればできるはず。
初登頂記はそれだけですごいことなのに、それに大義名分をくっつけて、主と従が逆転したりして、どうもすっきりしないです。
地図を作るのは大変なんだぞ、と苦労を押し売りされても、なぁに しなくてもいい苦労を勝手にしたんじゃないか、と思ってしまいます。
投稿: くまぼう | 2009/06/23 23:07
コメントありがとうございます。
>hoyohoyoさん
やっぱりスタントの方もいたんですね。
そうだろうな~。あんな転落したら、普通の俳優さんなら大変なことになりそう(^^;
でもあの雪崩に埋まったシーンも、本当に相当深く埋まってましたね。
>くまぼうさん
原作でも、映画でも、柴崎は自分から意地を張って初登頂をめざしたようには描かれません。意地を張ったんは陸軍上層部で、柴崎ら測量隊はその命令で行っています。参謀本部の奥から命令して、最前線に兵隊を送る軍隊の構造です。
だから(かどうかは知りませんが)、劔岳に立てた三角点も点の記には残らない4等三角点なんですよ。
むしろ、柴崎はたとえ回りに煽られても「自分は地図を作るために登る」と淡々と自分の仕事を進めていくスタンスで描かれているように思います。
でもたとえ劔岳でなくても、普通の藪山でさえ、装備等も未熟な時代に道なき道を大きな測量資材を携えて登り、現在の地図網の基礎と作られた方々のご苦労には素直に敬意を表します。
投稿: まりも | 2009/06/23 23:20
今日レディスデーなので見に行きまーす。
測量実習した私としては行かなきゃね。
投稿: misa | 2009/06/24 09:24
地図を作成するだけなら何も危険を冒して剣岳に登らなくてよい、というのは、新田次郎の原作にもありましたね。だが、山岳会との維持の張り合いでもなく、軍の命令だからでもなく、本当に正確な地図をつくるためにはやはり可能性があるならば登った方がよいという、技術者としての自分の志のようなもののために登る柴崎氏のつぶやきが小説にはありました。
映画でも柴崎氏は寡黙ですが、そういったものは十分に伝わっている感じがしました。
初登頂にかける山岳会と、測量のために登頂する柴崎氏との、互いの志に対する敬意もあり、非常に爽やかな心の交流も描かれていたように思います。
投稿: hoyohoyo | 2009/06/24 10:08
あーん(涙
せっかく行ったのに、完売で見られませんでした。
また割引の日にトライしたいと思います。
結構人気あるのね・・・
投稿: misa | 2009/06/24 14:44
>hoyohoyoさん
そうですね、その下りの小説の部分は忘れていましたが、志のために登るという雰囲気はよくあったと思います。
登っているうちに、とんがっていた信などもだんだん穏やかな人間になって、山に登る者が「同志」という感じになっていくところは、本当にさわやかでした。
過酷なウルトラ走り終わった後とも似てるかも・・・
>misaちゃん
チケット完売、残念でしたね。
私も今日は別の映画観に行ったけど、やっぱり劔岳は完売でした。
すごく人気あるみたいですよ。
測量実習・・・私が実習で覚えてるのは、ポール持って立ってたことしかないよ(笑)よく単位取れたよな~。
投稿: まりも | 2009/06/24 17:39
まりもさん、こんばんわぁ!
ストーリーには?ってとこも一部あったけど、YAMAYAMAもいい映画と思いましたです(^.^)
映像はもちろん、役者では特に長次郎役の香川照之さん、いい味出してはったと思いましたっす!!
今後、まりもさんが六甲でも北山でも比良山でも北アルプスでも山に行って、三角点を見かけたら、先人の苦労を思って、優しく撫で撫でしてあげてくださいネ(~o~)/
投稿: YAMAYAMA | 2009/06/24 23:26
15年ほど前に、劔岳に登った事を、思い出しました。
大きな石(岩)を登るコースが多かったなあ~。
本当に「男性的な」山でした~。
(しかし、結構忘れてきている~)
新田次郎の本も、読んだはずなのに、あまり思い出せない!
う~ん、歳かなあ。
映画、見たいですね!
また、山に登りたくなってきたなあ。
投稿: おかん | 2009/06/25 00:59
コメントありがとうございます。
>YAMAYAMAさん
香川照之さんは本当に上手な役者さんですね。
この方が出ると、作品が引き締まります。どんな役柄でもこなさはるし。
三角点、これから山に行くときは意識して、なるべく全部確認してなでなでしてきますね~
>おかんさん
劔岳に登らはったことがあるんですね!
険しい山なんでしょう?
私も行ってみたいけど、ちょっと無理そうです。
怖い岩場は苦手です・・・高所恐怖症。
投稿: まりも | 2009/06/25 08:41
点の記、大昔に読んだのですが、また最近読み直してみました。
新田次郎さんの作品は、どれも淡々とした流れの中で感動の生まれるものばかりなので、若い頃から大好きでした。
技術者の目で書かれる小説と言う感じが私に合ったのだと思います。
久々に見てみたい映画です。
この作品では、組織の上層と現場との意識のギャップ、これが大きなテーマの一つだと思います。
どのような組織でも大きくなればまま有る話であり、自分の仕事場にもやはり当てはまるような気がします。
この辺りをどう映像にしているのか、も興味が有ります。
投稿: カゲパパ | 2009/06/25 12:21
カゲパパさん、コメントありがとうございます。
技術者の目で書かれる小説かあ、なるほどそんな感じですね。
私も新田次郎は何冊か読みました。やっぱり「孤高の人」が一番ですが。これを読んで1日で六甲縦走するなんて信じられない!と思ったのですが、今自分もやってる(笑)
ただ、加藤文太郎はその後宝塚から歩いて戻るってのがやっぱり超人。
組織上層と現場の意識の差については、常に本物に接し本物を求める現場と対比させて、面子や体裁にこだわる上層の浅薄さが浮き彫りになるように描かれていたと思います。どうぞ鑑賞されてご自分の目でご判断下さいね。
投稿: まりも | 2009/06/25 17:57
7月からは忙しくなるので今日思い切って(千円ではないけど)見に行ってきました。
なかなか良かったです。
結構いっぱいだったわ。
50歳~の夫婦割引があるせいか?年配のご夫婦が多かったです。
危ないシーンが多くてかなりドキドキ・・・
私としては、納得できない部分はなかったです。
昔は面子を大事にしてただろうし、ここまで来たんだからうーん行きたいっていう心理も理解できます。
投稿: misa | 2009/06/25 18:00
misaちゃん
定価で観る価値あるでしょ。
年配のご夫婦、どこでも多いんですね~。
ちょっと前に「余命1ヶ月の花嫁」観たときなんて、回り中高生の女子ばかり・・・むっちゃ浮いてた私。
>危ないシーンが多くてかなりドキドキ・・・
滑落シーンなんて、思わず声を上げそうになってしまいました。雪渓や岩場歩いたりするところは、山岳ガイドの人がスタントになるようですが、あの滑落シーンは4回もやり直しがあったとか!凄すぎ。
投稿: まりも | 2009/06/25 18:45
まりもさん、皆様
原作は15年ほど前に読んだのですが、なんか他の本とストーリーが混じっちゃって、剱岳がどうだったかはほとんど忘れてます。でもまりもさんの解説を読んで少し思い出しましたような気がします。
なんか感じている違和感、もう一度読み返すと解消するかもしれません。
しばらく前、frunで新田次郎の話題が出たとき、再読しようと何冊かまとめ買いした中に点の記も入っていて、部屋の隅に転がってます。
読んだことなかった 銀嶺の人 を読み始めたところですが、順番変えることにします。
投稿: くまぼう | 2009/06/25 18:55
今日みました!
大自然の中で繰り広げられる人の営み。
人は強いなーというのが感想でした。
むろん剣岳、立山の厳しさはよーーーく映像でもわかりましたが、無名でもいいという人の行いの積み重ね、、、。歴史を作っていくんですね。
投稿: hearty | 2009/06/26 00:10
>くまぼうさん
15年も前に読まれたのなら、内容はなかなか覚えてませんよね。私も新田次郎の小説何冊か読んだはずだけど、「孤高の人」以外はどれを読んだかすら覚えてません(^^;
それに、その時の自分の境遇によっても映画観も読後感も変わってくることありませんか?
走ったり山に行ったりすることなかったら、私も「点の記」もそんなに感動することなかったかもしれません。
>heartyさん
>無名でもいいという人の行いの積み重ね
そうですねー、ほとんどの歴史は、「名もない人」によって作られてますよね。
長治郎のセリフ「誰も行かんかったら、道はできんちゃ」これも登りたい人を登らせたいという長治郎のプロ精神から出てきたものでしょう。
よりよい地図を作るための柴崎とこの長治郎、名声を得るためだけの登頂ではなかったところに、この登頂の深い意義があるように思います。
投稿: まりも | 2009/06/26 20:07
こんにちは。
私も見てきました。
劔岳の美しさと険しさ、山の怖さ、測量の大変さ、陸軍上層部のエゴ(それと反比例して柴崎たちの純粋さ)などがとてもよく描かれていたと思います。
長次郎を演じた香川照之、柴崎を演じた浅野忠信らも素晴らしかったです。特に長次郎その人かと思うような香川照之は最高だったと思います。
また、全体的に明治人のダンディズムのようなものなども感じました。
投稿: ひろ009 | 2009/07/27 21:43
ひろ009さん、ご無沙汰してます。
ひろさんも見られましたか。
いい映画でしたね。スタッフ・キャストの人たちも入れ込んで作ったという感じが伝わってきました。
確かに昭和人・平成人には、ああいう気骨はあまりなさそうです(^^;
投稿: まりも | 2009/07/28 12:57